磁性超薄膜の磁気異方性の研究
金属表面上に原子層単位で制御されて作製された磁性超薄膜は、バルクの磁性体には見られない特異な磁性を発現する。例えば、磁化が表面に対して垂直に向くという磁気特性(垂直磁気異方性)は [1-3]、基礎物理学的な興味だけではなく磁気記録媒体などのデバイスへの応用という面からも非常に注目されている。磁性薄膜を研究する上では、原子レベルで構造を制御して作製した試料についてきちんと構造を評価し、磁気特性を評価する必要がある。磁気特性の測定に関しては、光や電子による測定法が用いられる。その代表的な測定法として、内殻吸収を利用した内殻吸収磁気円二色性 (MCD) がある。MCD 分光測定は磁性薄膜について元素選択的にスピン・軌道磁気モーメントを得ることが可能である。
光物性研究室では、 広島大学放射光科学研究センター (HiSOR) BL-14においてナノスケール磁性体の作成、結晶構造および磁性の研究を行っている。測定には X 線内殻吸収磁気円二色性 (XMCD) 分光を用い、現在は主に金属基板上に原子層制御した磁性金属薄膜や多層膜を作成し、膜厚に依存した磁気異方性や磁気モーメントの変化を研究を行っている。
参考文献
[1] P. F. Carcia, J. Appl. Phys. 63, 5066 (1988).
[2] F. J. A. den Broeder, et al., Phys. Rev. Lett. 60, 2769 (1988).
[3] G. H. O. Daalderop, et al., Phys. Rev. Lett. 68, 682 (1992).
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