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学部・修士・博士課程を歩む若者へ
〜光物性研究室の構想2〜


理学研究科物理科学専攻・教授
放射光科学研究センター・センター長

谷口雅樹



○学部学生

 これまでの専門に必ずしもこだわることなく、産業界や教育界など様々な世界に飛び込んでゆきます。  4年次までに修得した学力は理系分野の基礎を形成しますので、将来にわたって柔軟な選択を可能にしているように思います。 理系分野或いはその関連分野で仕事をする人にとって、近い将来、いい学科にいたものと実感することと思います。 光物性での卒業研究は、固体物理の基礎、先端材料、超高真空、エレクトロニクス、計算機或いは先輩との共同実験など、 将来の取り組みに直結する様々な事柄を含んでいますので、ぜひともここでの経験を生かしきって頂きたいとます。

 私の弟はシャープに勤めています。学部卒業までに少なくとも、ワード、エクセル、パワーポイントは当たり前にしておくよう、 たびたび申しております。 私は、これに英語力を加えておきます。 パワーポイントは、当たり前に使用できるということだけではなく、プレゼンテーションの力を養っておくという事と思います。 社会は、前向きな姿勢、柔軟な発想による企画・立案力、新しい仕事に挑戦する強いエネルギー、時間を先取りする感性など、 様々な期待を寄せていると思います。ひとつでもいいですから、これだけはというものを自分のものにして下さい。 また、産業界に進もうとしている人は、積極的にインターンシップを活用して社会をみる目を養ってください。 自分の職業適性や将来設計を深く考える契機となります。

○修士課程の院生

 学部までは、受講する科目など、どうしても受身の部分が多いのが現状ですが、修士からはそんなことはありません。 テキストなり文献なり、どんどん自分でこなして行ってください。 文献の内容など、教官もすぐに答えられない事がたびたびあります。 これが私達にとって、とても良い勉強になります。

 4年生の卒業研究から継続している人たちは、4年次で全体像がみえて、M1ではかなり調子がでている頃と思います。 学部でもそうですが、修士ではなおさらのこと、研究を通した教育が基本です。

 光物性では修士の院生に、進学・就職の希望の区別なく、世界初演の研究に取り組んでもらうことにしています。 そして成果を学術論文にまとめる時には共同研究者として共著者に入っていただきます。 高度専門教育の ”トレーニング”などと悠長なことを言っていないで、いきなり固体物理の最前線の研究を、 人ではなく "自分" が中心となって展開してください。 一番先頭を走る痛快さ、手本のない苦しさなどを通して、 研究の醍醐味を存分に味わって将来の糧にしていただきたいと考えています。

○博士課程の院生

 2010年における我が国の博士課程後期入学者数は約23,000人となります。 今後、国際社会で活躍する機会が多くなりますが、その際、学位は相当大きな影響をもたらします。 出来るだけ若いうちに学位をもって行動範囲・活躍の場を大きく広げることが出来たとすると、 その人の可能性が想像もつかないほど広がって行くのが目に見えるような気がします。 光物性を巣立っていった諸先輩の活躍がこれを証明しています。

 広島放射光が未だ計画中の頃、光物性の院生と一緒につくばの高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設で 光電子分光の実験をしました。 何回か実施するうちに、広大生の活躍が突出してめざましく、 このことが高エネルギー研のスタッフの間で評判になりました。 出るところに出れば、院生本人が思っていたより遥かに高い評価が得られることを実感したとことと思います。

 私は、学界とともに産業界の研究者・経営者の方々とお話する機会を持っています。 私の中には、「広島大学の学生・院生は社会の中でもっと、もっと評価されていいはずだ。」、 「実際のところを知ってもらうには、広島大学の学生・院生が持っている実力を、 大学にの中に閉じることなく積極的に外に向かって発信する必要がある。」、 「教職員はこのことについてもっと真剣に取り組むべきである。」という強い思いがあります。

 光物性で学位を取得した院生でアカデミックなポストへの希望をもったひとは、 大変な競争の中、全員、研究所、大学、高専で採用していただきました。 本人の取り組み、運、学問分野の新しさ・発展性などが、いい結果につながっていると考えています。  また、最近は産業界から、いい学生さんを紹介して欲しい旨のお話が増えています。 ホームページの求人覧も見てください。博士に対する求人が急増してます。 産業界の方いわく、「以前とは様子が一変し、院生が有能であれば、即ち、自分はこういうことをやってきています、 これまでの取り組みを通して、さらに新しい可能性に挑戦してみたいと思います、というような事がはっきり言える人 (柔軟性をもっているということ)、採用後の近い将来、チームをまとめてゆけるような人であれば、 時期にこだわらずいつでも面接して採用したい。」とのことでした。

 私は、広島大学、大阪大学、東京大学を歩いて来ました。東大の学生さんは、 論文を明日までに読んで来いと言ったような時の対応は抜群で、瞬時値にすぐれています。 広大の学生さんはおしなべて言えば、瞬時値もかなり高いほうですが、むしろ特筆すべきは、 研究課題に意欲をもって取り組み、これを半年なり1年なり継続したときの積分値で際立った能力を発揮する ということです。また、共同作業も得意です。瞬時値には派手さがあります。 積分値と強調性には瞬時値ほどの派手さはありません。しかし、長い目で見て、どれほど貴重な能力か、 議論するまでもないでしょう(継続は力なり!)。社会は様々な能力を必要としています。

(雑感)

--- これだけは --- というものを一つ身につける。 人がすすんでやらない事を率先して行う。(会社でもどこでも、これを続けている内に、そこにいてもらわなくてはならないようになる。)


--- 同じ時間と労力を費やすならば ---
人がやってない事、人ができない事をする。(これを数年間続けていると、正真正銘の専門家になれる。)


--- 将来 ---
現在と同じ状況は永遠には続かない。常に可能性を広げる事を視野に入れておく。



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広島大学 理学部・理学研究科 物理科学専攻

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