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逆光電子分光法を用いた非占有電子状態の研究

 光電子分光法は、物質に光を照射したときに電子が物質外に放出される外部光電効果を用いている。 このような光電子分光法は物質の電子状態を理解する上で欠くことのできない重要なツールである。 現在、入射光に放射光やレーザー光源を用いた角度分解光電子分光法では、1 meV を切るエネルギー分解能で精密な測定が可能となっている。
 逆光電子分光(IPES)は電子を物質に入射して放出される光を測定する実験手法である。 物質に入射された電子はより低い電子状態へ緩和しようとするが、フェルミ準位以下はすでに占有されているため、フェルミ準位より上の非占有状態へ落ち込む。 このとき、緩和の際に放出される光のエネルギーを測定することで、エネルギー保存則から緩和した先の電子状態密度が直接測定できる。



角度分解逆光電子分光装置


逆光電子分光

Inverse Photoemission Spectroscopy : IPES

 逆光電子分光法は物質の非占有電子状態を観測するための手法で、物質に電子を入射し、入射電子が非占有状態の低いエネルギー準位に緩和する際に放出される光を測定する。 この測定には、入射電子のエネルギーを変化させ一定の放出光を検出する BIS (Bremsstrahlung isochromat spectroscopy) モードと入射電子のエネルギーを一定とし、放出光を分光検出する TPE (Tunable photon energy) モードの二つがある。 BIS モードではバンドパスフィルターを用いており、分光器を必要としないため装置設計が容易である。 また、入射光源にX線や真空紫外線を使用できる利点がある。 しかし、単一のエネルギーしか検出できないうえに、検出する光のエネルギーを任意に設定できないため、測定における自由度は低い。
 一方、TPE モードでは試料から放出された様々なエネルギーの光を同時検出するので効率が良く、入射電子のエネルギーを変化させることで共鳴逆光電子分光が可能であるが、スリットや回折格子といった分光系により分光するため検出される光は暗くなってしまう。

 角度分解逆光電子分光法は、上述した逆光電子分光法において入射電子の入射角度をかえる手法で、この測定から非占有状態のバンド分散を得ることが出来る。

広島大学 理学部・理学研究科 物理科学専攻

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